或る書店員の憂鬱。

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俺は大型書店員、 ここに勤めて早7年。 勤務態度は至って真面目。 活字はもちろんお友達。 読むことが好きだ。俺などが書くことは野暮だ。 俺は読み専であることを誇りに思う。 紙の質感、捲るときの乾いた音、新刊の刷りたての匂いや古書を開いたときの鼻のむず痒さ。 表紙の手触り、装丁の美しさ、それからフォント。その形から受けとる心象。 古い日本語旧字体。 その複雑に捻れ絡み合うような小賢しい字の味わいが好きだ。 書き手が行間に込めたものを読み手として紐解く作業が好きだ。 もはや読むことが好きなんじゃない。 俺は書籍が好きなのだ。 電子書籍は本とは別個の媒体と認識している。
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