或る書店員の憂鬱。

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名作とか代表作と世間一般に認められている作品以外にも素晴らしい作品が山とあるのに、 それが端に追いやられ、 ゆくゆくは消えていくという現実を俺は何度も目の当たりにしてきた。 それに対して一書店員は為す術を持たない。 実に嘆かわしいことだ。 * 一階フロア中央に、人気作家の本を売る一角がある。そこは客が旬を知ることのできる場所であり、作家陣にとっても特別な意味を持つ場所だ。 そこを我々スタッフはフジロックに例えてグリーンステージと呼んでいるのだが、 そこに並べるヘッドライナー陣の作品の傍らに 埋もれた名作をそっと置いてしまいたいという衝動に駆られることが多々ある。 しかしどんなに趣向を凝らしたポップを作っても我が推薦図書が売れるかどうかはわからないし、俺は職場においてそのような権限も持ち合わせていない。 人の好みは千差万別。 無理を通せばエゴになる。
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