雨が止んだら

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 明るい店内に入るとほっとした。そんなに狭いという感じはしない。むしろ充実した品揃えに目が迷子になりそうになる。それから気になるのが―――  「いらっしゃいませ」  奥の方から声が聞こえて女性が一人出てきた。店員さんだろう、ちょっと聞いてみることにした。  「この絵なんですけど……」  お店の壁には絵がたくさん飾られていた。街の絵、人物画、それから植物の緑いっぱいの森の中の動物。多分みんな同じ人が描いているっぽいけど、なんというかとても不思議なタッチというか妙に引き込まれるというか……  「不思議な絵だなー、と、思って」  なんだか変な言い方になってしまった。印象が言葉にしにくい。幻想的、なんだけどもっと手で触れられるくらい実感がある。舌足らずだったけどでも、店員さんは、ああという風にすぐに答えてくれた。  「アンリ・ルソーという人の絵なんです。フランスの方なんですけど。不思議な絵、ですよね。」  「はい」  私はうなずいた。  「この方、実は専門の教育を受けたプロの画家というわけじゃないんです。元々、日曜画家とか素人画家とかそういう人だったんです。」  「へー……」  確かに上手い!とか綺麗!というわけじゃないけど。でも存在感がすごくある。
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