Kさんの話

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 人見知りについてだけは、自信を持っている私だが、不思議な話を生で聞いてみたいという好奇心に突き動かされることがたまにある。  先日も、仕事の打ち合わせを済ませた後、なにか不思議な体験をしたことはありませんか、と聞いてみた。  そういえばねと語ってくれたのが、こんな話である。  彼(仮にKさんとしておく)は、都心から1時間ほどのところに住んでいる。単身者用のアパートだ。  例によって、残業代のつかない残業をして、駅前のスーパーで半額になった弁当を買って帰ってきた。  ふと見上げると--彼の部屋は2階にある--自分の部屋の明かりがついている。 「あれ? 電気をつけたまま出てしまったっけ」  さらに不思議だったのは、カーテン越しに、なにか影が動いた気がしたことだ。  しかし、残業続きの毎日、電源のオンオフも定かでなかった。  泥棒に入られたとは思いませんでしたか?と、たずねると 「まったく思いませんでしたね。そうですね。いやぁ、不用心でした」とKさんは、日頃感じさせる人のよさそのままに笑った。
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