Kさんの話

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 5回目の対面となった晩になって、Kさんは、彼女が見つめているのが自分ではないことを発見した。  もっと後ろ、壁のあたりを彼女は悲しそうに見ているのだ。 「その発見だけは目が覚めても覚えていて」  彼女の目線の先を確かめると、積読になっている本の山が目についた。 「天、本の頭の部分に青い色紙が見えたんです。  スリップって言うんですか、普通は買ったときに店員さんが抜く紙がありますよね。あれが挟まった本があったんです」  新古書店で買った本である。出版社から流されることもあるので、まったくないわけではないが、普通なら考えにくい。   本を手に取って見ると、その表紙を飾っていたのが、毎晩現れていた少女だった。
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