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命の灯
倉橋書店は、戦後に彼の祖父が始めた、この街では老舗の書店である。
聡が物心つく頃には、彼の祖父が店長を務めており、取り扱う本の中から絵本や漫画を選んではプレゼントしてくれた。
本を読むのは好きだったし、時間を忘れさせるかのような、ゆったりとした雰囲気が漂っている空間、そして何よりも、大好きな祖父が居る店が聡はとても好きだった。
学校が終わればランドセルを置いて、祖父と語りながら店番をするのが大好きだった少年は、いつしかある夢を抱くようになった。
「おじいちゃん、僕ね、大きくなったらおじいちゃんの後を継いで本屋さんになりたい!」
傍らに本を積み、二人の好物のメロンパンをかじりながら聡がそう声を上げると、祖父は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその目尻にたくさんの皺を寄せると、聡の頭を撫でて喜んだ。
「聡は本当に本が好きなんだなぁ」
「うん。おじいちゃんの選んでくれる本、みんな面白くて、僕、大好きなんだ。僕もね、おじいちゃんみたいに、みんなに本を選んであげられる、そんな本屋さんになりたい。だから今はいっぱい本を読むんだ」
「それでね、いつか今度、僕がおじいちゃんに本を選んであげるよ」
「そうか、それは楽しみだなぁ。約束だぞ、聡」
そういうと、祖父は聡に小指を差し出した。聡はそこに自身のものを絡めて指切りをした。
「うん! 約束だよ」
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