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聡が高校に上がった年、祖父がガンを患っていることが判明した。
検査入院から一転、祖父の状態は良くなく、それから病院に入りきりになってしまった。
聡は学校の帰りにお見舞いに行った。でも、医者に末期と宣告された祖父に選んであげる本が見つからなかった。
抗がん剤の副作用で真っ白だった髪は抜け落ち、身体はやせ細り、時折痛みに顔を顰める祖父に、気を紛らわせる楽しい本や、ましてや勇気づける本など選べるはずがなかった。
日に日に弱っていく祖父の姿に、聡は焦りを感じていた。一体自分に何ができるというのだろう。
そんな聡の心を察したのか、ある日、祖父は病床で見舞いに来た聡にこういったのだった。
「聡、儂に本を選んでくれんか」
「え……?」
「毎日、こうしてベッドに張り付いてばっかりもつまらんでな。お前の選んだ本が読んでみたい。一つ選んできてくれんか」
「でも……」
「頼む」
その時の祖父の優しい言葉と、穏やかな笑顔が、今でも聡の脳裏に焼き付いている。聡は帰宅すると祖父の店の本棚から本を物色し始めた。
一週間かけて、聡は本を選んだ。だが、どうしてもこれ、という一冊を絞り込むことができなかった。
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