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聡は昔祖父が選んでくれた最初の絵本と、中学の時、骨折して入院した際に祖父が紹介してくれたあの本と、自身が選んだ「西の魔女が死んだ」という本を手に病院を訪れた。
「聡、本を持ってきてくれたか」
祖父に促され、聡は選んだ三冊の本を広げて、うしろめたそうに祖父にこういったのだった。
「じいちゃん、俺、選んだんだけど、一つに絞れなかった。……どんな本を選んでいいのか、わからなくて。考えて、考えたんだけど思い付かなくて。この二つは昔、じいちゃんに選んでもらった本だけど、これから先も一生、多分絶対に忘れない。俺にとってはずっと大事な本だから……っ!」
聡の目から涙がこぼれた。言葉に詰まった聡の姿に、祖父は続きを促すように手を伸ばすと彼の肩を叩いた。その力が昔よりも弱いのが、とても悲しかった。
「そうか。……でも、これは儂が選んでやった本じゃない。これが、お前が選んでくれた本なんだな」
祖父は聡が選んだ本を手に取って、その感触を確かめるように表紙を撫でると、穏やかな表情を浮かべた。
「聡、儂はとてもうれしいよ。お前に影響を与えた本が、儂が選んだやった本だったことが。……この歳になって、書店をやっていてこんなにうれしいと思ったことはない。聡、これからもこうして誰かに本を選んでやってくれないか」
聡は声にならない声で泣きながら頷いた。肩を叩き、祖父は微笑んだ。
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