命の灯

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 数週間後、祖父はこの世を去った。聡は祖父が息を引き取った病院のベッドの脇に置かれた、聡が選んだ「西の魔女が死んだ」という本を手に取った。  ……ページの間が浮いている。何かが挟まっているのが見えた。  聡が開いてそれを取り出すと、それは小さなメモだった。ようやっと書いたと思えるガタガタで、細い筆圧の祖父の字で、こう書かれていた。 『不自由になって初めて分かった。誰かに、ではなく、自分で本を手に取って選ぶ楽しさを書店に足を運べない人たちにも知ってもらいたい。移動本屋をやらないか、聡。残した金を使ってくれ』
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