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鳩と音楽
一.
都心からは少し離れた所に、彼女の通う私立・彩楸学園高校はあった。
敷地も広く、自然や交通環境にも恵まれていて、おまけに寮設備も整っているので、地元からも遠くの地域からも、毎年様々な学生が入学する。
ただしこの学園では、途中編入を一切取り入れておらず、一度入学すれば減ることこそあれ、増えることはない。逆に言うと、この学園に通うためには絶対試験に合格し、且つ一年生からという条件になる。――留年は別だが。
笠木矢㮈《かさぎ やな》はどちらかというと地元で、電車で一駅、自転車で最低三十分という通学距離だった。その理由もあって、彼女の学力で何とかなり、母親の母校でもある彩楸を志望した。
まだ入学して二週間の、ピカピカの一年生。
「笠木―、おはよー」
下駄箱の前で後ろから声がかかり、矢㮈は振り返った。
そこに立ってにっかり笑っているのは、入学して一番に仲良くなった臣原千佳だ。
なぜか矢㮈のことを名字で呼んだり、変に男っぽい性格――単に雑なだけか? ――なところがある。
しかし彼女自身は、顔も可愛い、ほっそりしていてスタイルも良い、スーパー美少女と言っても過言ではなかった。
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