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「あぁ、おはよう。今日も元気だね」
矢㮈が返すと、千佳は小首を傾げた。
「そう? まぁ、元気だけが取柄でもあるから」
彼女はそう言って、また笑う。
こんな会話も、もう早くも二週間が過ぎる。千佳と何気ない雑談をしながら教室へと向かった。さすがに教室の中も緊張感は薄まり、女子は何となくグループの塊ができあがっている。
まだ名簿順の並びなので、千佳の後ろが矢㮈の席だった。
「今日の英語予習した?」
千佳が横向きに椅子に座り、矢㮈の方を振り向く。
「初めの方ちょこっとだけ。全部とかあたしには無理無理」
矢㮈がお手上げのポーズをとると、千佳もうなずいた。
「やっぱそうだよねー。あたしも少ししかできてない。まだ中学の復習のはずなのに、受験勉強の記憶がどっか行っちゃってる」
英語や数学はまだ中学の復習やら何やらで、どうにかついて行けてはいる。しかし授業が始まって、進むスピードが中学とは桁違いであることを目の当たりにした。
もともと頭の回転が良いとは言えない矢㮈は、ついていくのに必死で、先生の話などあまり耳に入ってこない。それで余計に分からなくなる。
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