残滓

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 その日、私は久しぶりに実家に帰ってきていた。普段は実家を離れて一人暮らしをしているのだが、明日はお正月ということもあり、私は実家で正月を迎えようと帰ってきていた。 久しぶりに会った両親はやはり歳をとったせいか、体は少し小さくなったように見えたが、私が帰ってくると、とても穏やかな笑顔で迎えてくれた。 「仕事は大丈夫?ちゃんとご飯食べてるの?」 「体を壊しちゃ意味がないぞ」 「大丈夫だよ。職場の人達、みんないい人ばっかりだから」  その時はまだ、なんてことない日常だったと思いたかった。久しぶりの両親との会話は、どこかぎこちない部分があったが、頭の中は今夜の紅白歌合戦に出場する好きなアイドルのことばかり考えていた。
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