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「…おーこわ。ま、俺の仕事は終わりだな。じゃーな」
「あ、おにぃありがとう!」
「学校では相澤先生と呼びなさい」
背中を向けながら手を振る彼を見送りながら、会長と会計係は2人で何もない空を見上げていた。
もうこの空に花火が上がることはない。
「勝手なことして、すみませんでした。」
「なんであんなこと」
「1秒でも、一瞬でも長く、会長にその時間を過ごして欲しかったんです。」
彼女にはその気持ちはわからなかった。
彼の立場に立ってみても、同じ行為はきっとできない。
自分の好きな人が、他の誰かといる時間を長くつくるなんてことは。
「……なんで嘘です。」
「え?」
「10発が終わった時、5発が始まった時、会長は誰のこと考えていましたか?」
なんてこと、してやられた!
彼女は瞬時に理解した。
彼はすべてわかった上でやっていたのだ。だってこんな自信満々の笑み。
彼は最初からこうなるとわかっていたのだ……彼女自身の気持ちの変化を
「ちゃんと終われたのならはじめてください。」
「…ずるいこと、するんだね」
「学校巻き込んだ会長に言われたくはないですけどね?」
「…何も言い返せない」
来年は誰と花火を見上げるのか、その時彼女は何を思い出すのか……
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