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彼だけはそれを知っていた
「“文化祭を最高のものにします。皆さんの何年後も忘れられない青春を、私がサポートします。”」
「……。」
「ようやく、果たす時ですね、会長」
「よく考えればそんな公約でよく生徒会長になれたよね。私。
生徒会のみんなには本当感謝してる。」
「俺はどんな公約だって、会長を応援してましたよ。
でも会長、どうしてそんなに文化祭にこだわったんですか?」
ふと、今まで疑問に思っていたことが口をついた。
彼女が決めたことならば彼はなんだって応援も協力もしたことだろう。
けれど、ここまで一緒に走ってきた彼には理由を聞く権利があると、感じたのだ。
「特に意味なんてないよ。あの時はそれがいいと思ったからそう言っただけだし。言ったからには果たそうと思っただけだし?」
依然、彼女の目線は窓の外。
「イベントもね、私10歳上の従兄弟がいて、私と同じように高等部の生徒会長だったの。
当時のラストステージの話聞いていいなーって、思ったから打診しただけだし…」
ああ、もどかしい。
彼女の口からなんの躊躇いもなく嘘が溢れ出るのは。
きっと幾度となく予測して練習した答えだと、彼はすぐ感じたのだ。
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