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「会長、俺に嘘ついても無駄ですよ。俺、単に頭いいだけじゃないんで。」
この2人きりの空間がそうさせたのか、気だるい空気がそうさせたのか。
彼自身にとっても意外な言葉が飛び出した。
それは彼女にも同じことで、いつもの従順で優しい彼からとは思えない言葉に、驚きを隠しきれなかった。
「やっと、こっちみましたね」
「………君塚君…」
リミッターが、少しずつ外れるのを感じた。
でもそれ以上は許されない。
彼女は彼の気持ちがわかっているし、そのことを彼もまた知っているのだ。
それでも、関係が変わることはなかったのは、彼女がそれを望ましく思っていなかったからなのだ。
彼女が許さない限りは、永遠に変わらないだろう。それほどに彼は彼女に陶酔していたのだ。
「何も言いませんよ、俺は。
だから教えてください。ほんとの理由を」
何も言わないと言ったのは、この先の彼自身の言葉なのか、それとも本当は理由を、ということなのだろうか。
どちらにしても話さざるを得ない。
やはり、彼は頭がいい。
「…私が、そうしたかったの。
別に他の生徒のためなんて…本当は思ってないよ。
私自身が、忘れられない青春を過ごしたかっただけ。それを自分自身で叶えようとしただけだよ。」
嘘、ではない。
彼にもそれは伝わった。
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