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と同時にそれが核心をつく答えではないということも。
「…あのね、好きな人がいたの」
「いた?…いるじゃなくて?」
あぁ、彼はそんなこと知っていたうえで私を慕っていたのだ。
そう確信する程、彼は自然な反応をした。
「その人のことずっと、好きでね。そう、初恋だった。
でも、中等部に上がったころ…私の友達と付き合いだしたの。」
この話、彼はどこまで知っていたのだろうか。
知っていたとしたならば今までの牽制は、全く、意味がなかったんじゃないか…。
彼女には益々彼がわからなく感じる。
彼は一体、こんな私のどこをそんなに……。
「まあ…だから、好きでいちゃいけないって思ってる。
でもさ、好きじゃなくなるって所作、難しくない?」
「そうですね、難しいです。」
あ、しまった。聞く相手を間違えてしまった。
彼女はまっすぐ自分を刺す彼の視線から目を逸らすしかなかった。
「…だから、青春を、それ以上の青春で塗り固めたいだけ。恋じゃなくて、友情でもなんでもいい。私の生涯忘れられない思い出はあの人じゃない、この文化祭にするの。」
「…そうですか、わかりました。」
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