第六章  咲姫と “魔笛”

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 照明を落として、みやびな雅楽が会場に流れる。  薄暗がりの中。花嫁の立ち位置に、板付きのピンスポットを貰って、外織姫の登場だった。花婿がスポットの外から、手を差し出して招く姫に吸い寄せられる様にスポットの中へ。  姫の手を捕らえて、手の甲に熱い口づけをする花婿。  花嫁の再登場の演出は、大成功を収めた。主役が再び新妻に移り、会場は和やかに新婚の二人を祝う雰囲気に落ち着いたのだった。  「ありがとう。君の奥さんは素敵な女性だね」、新郎と新婦が嬉しそうに隆仁と花音に礼を言った。  頬を染めて、楽しそうに大活躍した花音。  「いいのか?・あれは栄達師匠が君の披露パーティーの為に、特別に誂えてくれたこの世に一つだけの着物だろう」  そっと隅に連れて行くと、髪の乱れを直して遣りながら。額に口づけして聞いた。  可愛く笑って答えた花音に、また惚れ直した。  「師匠は必ず喜んでくれるわ。二人も幸せな花嫁が着るなんて、さすがにワシが図案を引いた着物は、人を幸せにする力がある凄い着物だって、威張るに決まってる」、栄達師匠の自慢そうな顔を思い描いてクスッと笑った。  「楽しかったか」  隆仁は、花音を優しく抱き締めた。  花嫁の為に頑張った。彼女の幸せを願う花音が、とても誇らしかった。  だが、咲姫は女王の面子を潰されて怒り心頭。花音に怒っていた。  「召使いのくせに、生意気な娘ね」  花音が見違えるほど美しく見えるのも、ひどく不快だった。  召使いにしていた頃は、花音の能力発揮は当たり前の事で。むしろ立木の家では、便利な下僕だと思われていた。  でもこんな風に飼い犬に手を噛まれるのは、許せない。  (如何してくれようかしら)、イライラと爪を噛む。  それに隆仁が花音にのぼせているのも、彼女の今日の計画にはとっては具合が悪い。まずはあの目障りな娘から始末を付け、その後でゆっくりと隆仁を料理するのも良いかも知れない。  『この際だから宝飾店は、隆仁に買い取ってもらおう』、密かに心に決めていた。
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