第六章  咲姫と “魔笛”

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 「前の結婚式の時に、君にプレゼントする積もりで買ったんだ」  「君が描いた絵だなんて、知らずにね」  花音が僕に抱きついて、僕の唇を奪った。  (嬉しすぎる)  「クマさんの絵、続きを描かなきゃ」  「私と貴方と、子供達のカルテット」  言ってから、恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋めた。  「子供達って言ったのか」  (嬉しすぎて、気を失いそうだ)  花音を膝に横抱きにして胸に包むと、家族に囲まれた未来を勝手に想像した。  (顔が綻ぶのが止まらない)  そこで思い出した。  「だが花音。子供を無事に出産するまで、油絵具に触れる事は絶対に禁止だ」  「テレピン油の匂いは、お腹の子供に障るからね!」  断固として、言い渡した。
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