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「人生は何事も、修行じゃよ」
しっかりと作法を学んだ。そして、お稽古の時にはキッチリ和服の私。
「花音は着物が、よう似合うのぉ」
「馬子にも衣裳じゃ」、大いに喜ぶ師匠の皺だらけの笑顔が、とっても嬉しい。
立木信之の邸に引き取られてからは、十人並みがやっとの娘だと言われ、厄介者扱いされ続けて来た私には、栄達師匠の優しさに包まれた山寺の暮らしが幸せだった。
自分のそんな幸せに夢中で、母の事を忘れていた罰が当たったのかも知れない。
「君のお母さんが倒れた。病が重いから帰って来て看病してくれ」、立木信之から連絡が入ったのは秋が深まって。奥山が紅葉の錦に染まった頃だった。
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