第一章  花音の“アメージンググレース”

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 まさにそれは、立木信之にとっては青天の霹靂!  大変な事件が起こったのは、十一月に入ってすぐの事だった。  【咲姫の妊娠が発覚したのだ】  然も、お腹の子供の父親は隆仁では無い。  隆仁は仕事に追われてこの半年の間、咲姫とそういう関係を持ってはいなかったのだ。  十文字家は大騒ぎになった。  隆仁のショックは大きい。裏切りは二度目の咲姫だが、今回はハッキリと隆仁の女だった。  十文字家を継ぐ者として、咲姫の為にも早く一人前の実業家として立たねば成らないと、自覚してもいた。  闘いの日々の中で、自分を鍛えて来た隆仁は、辣腕の片鱗を見せ始めてもいたのだ。 やがては妻に迎える咲姫の為、そして彼女との間に生まれるであろう子供の為。  その咲姫が、あろう事か。他の男の子供を身籠った等とは、隆仁の誇りが許さなかった。  身悶えする程の、怒りと苦悩。  だが当主である隆仁の父・隆房は、胸を撫で下ろしていた。
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