第五章  “エチュード第3番・ホ長調” を、ぶっ飛ばせ

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 3・  強引に腕の中に捕縛して連れ帰った、隆仁の新しい巣。  逃げられない様に、出入り口が一つだけの最上階の部屋だ。  邸に連れ帰っては、隆房や苦手な家政婦もいて、極めて拙い。  だから、ペントハウスを用意した。  花音をリビングに通すと、素早く玄関ドアをロックした。大股で歩み寄ると、目の前で仁王立ちに為り、花音を上から下までまじまじと見た。  明るい所で花音を見た隆仁は、驚くより不快になった。途轍もなく美しくなった花音を見て、他の男の存在を疑ってしまう。  (調査洩れかと思うと、気が気では無い)  手首を掴んで、腕の中に引き寄せた。  花音は身体を硬くして、激しく抵抗しているが、隆仁には気にしている余裕など無い。  「三年もの間、何処に居たんだ。探したのに」  (知っているが、花音に言わせてやる)  「殴り倒してご免なさい」  花音が身体を硬くしたまま、言っている。望んでいるのとは違う言葉だが、声が聞けて嬉しいから許してやろう。  強く抱き締めてから、押さえ付けて置いて髪をほどく。  ピンを引き抜き、ゴムを取ると手を髪の中に入れて顔を包んだ。手に花音の柔らかな髪の感触が触れる。  唇を熱く重ねて、花音の呼吸を奪った。  激しく抗う花音の身体から、力が抜けた。  だが花音は要注意だ。ウッカリ気を抜けば、また僕を殴り倒して逃げかねない。  花音は気を失いそうになり、隆仁の身体にしがみ付いた。  隆仁の熱く激しい鼓動が、キツク抱き締める胸から伝わって来る。  頭を包む隆仁の、手の温もり。  忘れた筈の三年前の記憶、恋した日のときめきが戻って来て苦しい。  花音の身体の温もりが欲望を倍増させる。  花音は僕のものだ。 (誰にも、渡さない) 、また決意が溢れでる。
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