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4・
いよいよ一番手のかかる、第三段階に突入だ。
次の一手だ。
外商を呼んだ。以前から頼んでおいたウエディングドレス、ベールとティアラを持って来させたのだ。
花音に着せる服の数々も、取り寄せた。
(花音を此処から出したら、逃げられる)
外商の男が、花音に見惚れている。
(物凄く不快だ)
今度から、女性の社員だけを呼ぶ事にしよう。
花音の選んだウエディングドレスは、とてもシンプルなデザインだった。でも身に纏うと王女様みたいで、気品に溢れて凛として見える。
清らかで誠実な愛が、すぐ手の届くところに在ったのに。三年前の僕には見分けられなかった。
今更ながらに、自分の不明を恥じた。
濃いグレイのベールを、頭から被っていた少女。やはり、花音だったと納得した。
僕の目の前でベールを試着している花音の様に、背筋を伸ばして真っ直ぐに僕を見ていた。
(僕の花音)
「仕事は、暫く休む」、と連絡した。
秘書が唸って卒倒したが、そんな事は如何でも良い。
やっと手に入れた花音だ。
逃がさない
【さあ、覚悟を決めて始めよう】
父と栄達師匠、そして絹子の同意を取り付ける。
貰えるまで、ネバる他に無い。
一番大変なのがどれか、甲乙付けがたい。
取り敢えず、父から落とそう。
ペントハウスに、まず父を呼んだ。
ウエディングドレスを試着して、手直しの採寸をして居る花音を見せる。
花音を見て驚いた父が、僕の狙いを察知したらしい。
「父さん、悪いがさっき婚姻届けを出して花音を法的に妻にした」
「結婚式に立ち会って貰いたい」
顔を真っ赤にした隆仁が、一気にまくし立てるのを唖然と聞いていた父が、やっと口を挟んだ。
「花音さん。隆仁に無理矢理にさせられたのではないでしょうね」
父が僕を無視して、花音に確かめている。
花音が恥ずかしそうに、違うと言って首を横に振った。
「着替えて来ますから、少しの間待っていて下さいね」
花音が寝室に消えると、場の空気を察した外商の男と衣装部の女性が、慌てて逃げる様に帰っていった。
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