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:着いたよ。ただいま
俺は家に着くと、早速ルリにメッセージを送る。
――ピコンッ!
:お帰りなさい。では、電話しますね。
すると、再び通知音が鳴ったので即座に開くと、丁寧な言葉で返事が来た。
――ピロロン……
なので少し待っていると、今度は着信音が鳴り始めたので、画面上に現れた応答ボタンを押す。
「夜遅くにすいません!」
「あっ。いいよ別に。俺も暇してたし」
「そうでしたか。じゃあ、言いますね」
「お、おぅ……」
彼女は受話口越しで「ふぅ」と深呼吸をすると、躊躇いながらもこう話してきた。
「実は私、彼氏がいるんですけど、上手く行ってないんです」
「えっ!?」
ルリに付き合ってる人だと!?
思わず手を滑らせてスマートフォンを落としそうになったが、「上手くいってない」という言葉が妙に引っかかる。どういう事だ?
「本当は早くに言って自ら身を引くべきでした。でも、どうしてもヒカルさんの事が気になってしまって……」
「そう、なんだ」
「はい。それと、私とヒカルさんって、どこか似ている様な気がしたんです」
「似ている? 俺と?」
「はい。何となく。ですけど……」
「そうか?」
「えへへ」
彼女はと言うと、照れくさそうに笑いながらも話し続けていた。
「ところで、ヒカルさんは何人兄弟なんですか?」
「ん? あー、俺は5つ上の兄がいるけど、あまり関わりはねぇっていうか。自分から関わりたくねぇって言うか……」
「そうなんだ! でも、兄弟がいるのはとても羨ましいです!」
「そうか? うざったくなるだけだよ」
「えー!」
「ははは」
ルリちゃん、反応が可愛いなぁ。
受話口越しでも、彼女の照れた声を聞くだけで何だか癒されていた俺は、自身の短髪を掻きながらも話を聞く。
「私は、その、一人っ子だったのでそういうの、羨ましいっていうか……」
「一人っ子だったのか?」
「はい! それに、お父さんはとっても厳しい人でした」
「そうか。なるほど」
「うん。だけど……」
彼女は静かに相槌を打つと、少しの間、沈黙が続いていたが、ゆっくりと破るかの様に話し出す。
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