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そう言えば、俺はよく、親から「お前は出来損ない」と罵られていた。
出来のいい兄と比べられては暴力、暴言を受けて。
あー。確か、親が離婚してからずっと、痛みを受け続けてきたんだ。そのせいか、嫌な思い出の部分だけ、記憶が綺麗に抜けちまってさ。
それに、俺の見た目は魚の鱗みたく、何重にも重ねに重ねられたコンプレックスで出来ている。
光がない程のどす黒い瞳と髪色、虚ろな目つき。そして、全身傷だらけの身体。
こんな姿をした俺だから、誰にも話しかけられることもなく、長い間、見放され続けてきた。
そのせいか、人を『好きになる』ことや、人に『愛される』こと、人を『愛する』ことを知らない。
だってさ、こんな見た目の俺が、誰かに『恋をする』って思うだけで反吐が出ちまうだろ。みんなだってそう思っている。
あぁ。気持ち悪い。今すぐにでも、フォークで顔のパーツを一つずつ抉りたくなる程、自分の顔が気に入らない。
だから、素の醜い自分を隠したくて隠したくて、そう思いながら嫌々、今日(こんにち)まで生きている。
しかし、そんな俺の考えを、180度変えた女性がいた。それは……。
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