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*  とある食品工場で働いていた時の話だ。  俺は他の男性従業員みたく、女や賭博には全く興味が無い。なので、ただ平凡に過ごせばいいやと思い、夜勤で何となく働いていた。  それと、争い事にも巻き込まれないよう、他人と話す時も気を使ったりしていたけどね。  まぁ、どんな仕事をしていたかと言うと、面倒臭い粉物の分量を測る細かい作業もあれば、重たい物を車輪付きのコンテナに乗せて運ぶ力仕事もあったりと様々だ。  飲食店みたく、人前で接客したりと言った華やかな仕事ではなかったが、俺にはとても性に合う仕事でもあった。決して苦ではない。  ただ、いくら必死に働いても、給料は変わらず安かったのが難点だ。まぁ、そこは派遣だから仕方ないや。と妥協しながらも懸命に働いていた俺に、ある出来事が起きた。  それは、粉物が入ったコンテナを運んでいた時のことだ。季節は丁度、春頃だったかな。 「ふぁぁ……」  俺は春特有の眠気に襲われていたが、眼を半分にしながらも懸命に運んでいた。 「うわっ!?」  しかし、コンテナに入っていた袋の一部が機械の角にぶつかり、そこから白い粉が流れてしまったのだ。 「やっべぇ……」  上司に 見られたらと思うと気が気じゃない。 そう思うと益々怖くなり、誰かいないかとしきりに見渡すが、周囲は黙々と作業を続けている。 「でもなぁ……」  ちなみに従業員の服装(俺も含めて)は、頭から下まで全身白い制服に身を包まれていて、尚且つ無表情で口元をマスクで隠している。  なので、下手に声をかけたら睨みつけられそうで怖い。かと言って、このままにしていたら、上司に見つかって怒られてクビにもなってしまう。  でも、ほうきを取りに行こうと思っても、大きなコンテナで出口が塞がれてしまって、とても取りに行ける状況じゃない。  どうすれば、いいんだ!?  八方塞がりになってしまった俺はコンテナから少し離れると、「はぁ……」と大きなため息をつく。 でも、この状況を回避する良いアイディアが全く思いつかない。どうすることも出来ず、途方に暮れていた。
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