piano

それからさらに数日後。

再び『sara』からメッセージ。

ー先日は、素敵な『愛の夢』ありがとうございました。思わず泣いちゃいそうでした。次のリクエスト、弾けるときでいいので、ショパンの『別れの曲』をお願いします。haruさんの『別れの曲』が、聴きたい。－

本棚から、『別れの曲』の楽譜を取り出す。

（やっぱり……別れ、なんだな……）

自ら弾いた曲も、悲しみの曲。
最初のリクエストも、そして今回も……

気が付くと、私は返信していた。

ー気に入っていただけたようで何よりです。一つだけ質問です。
あなたは、どうして別れや悲しみの曲ばかりを選曲するのですか？……ただの好みだったらごめんなさいー

これは、私の個人的な『興味』。
もしかしたら、この返信以降、『sara』との交信は途絶えるかもしれない。
それでも、気になった。
『sara』が別れの、悲しみの曲だけを選ぶ理由が。

ほどなくして。

『新着メッセージ１件』

通知が来た。
他のコメントなど、全く目に入っていなかった私は、通知と同時にメッセージを開く。

ーharuさんは、やっぱり曲について知っている方だったんですね。ただ良い曲、好きな曲で盛り上がる方ではなかったのですね。安心しました。
私、近々手術を予定しています。
場所が場所だけに、覚悟をしなければ……と、思っています。だから……－

私の心に、もやがかかった。そんな気がした。

ーあなたのショパン、聴かせてくださいー