第3話 僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい

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□□□□ 「おーい」 父に呼ばれて、私は読んでいた本をパタンと閉じると階下に返事をする。 「なーに、お父さん。どうしたのー?」 「お父さん達、ちょっと出掛けてくるから」 ふと、カレンダーな月は5月。 ああ、そうか。 今日は…………。 今日は、何の日だったのか思い出し、いってらっしゃいと見送る。 両親が出ていった後、読んでいた本をもう一度手に取る。 母は自分の書いた『遺証』を出版し、それは本として書籍化した。 しかし、まだ父は『遺証』を読ませてもらってないらしい。 それから、この物語もどこまでが本当なのか娘の私も気になって尋ねたことがある。 けれども、両親とも「どこまでだと思う?」と笑って教えてくれなかった。 きっと、この話は両親だけの秘密なのだろう。 自分の部屋の窓から手を繋いで歩いていく両親を見つめる。 ━━━今日は、両親が初めて出会った日だ。
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