第3話 僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい

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隣に並んだ琢磨が空から降ってくる雪を見ながら、「もうクリスマスだね」と呟く。 「そうだね。 まだお昼なのにめっちゃ寒い」 はぁとまた手に息を吹きかける。 琢磨が巻いていた自分のマフラーを半分咲来の首に巻きつける。 「どう?」 「……温かい」 「よかった。 ……ねぇ、渡未さん」 「うん?」 「いつになったら、君の書いた『遺証(小説)』読ませてくれるの? 僕のは、もう読んでるのに」 「私、始めに言ったよー。 完成するのは、だいぶ先だよって。 今日、編集者さんに結末(最後)の原稿を渡して来たけど。 でも、もう上巻は発売されてるのに、買うことはしないの?」 首を傾げて尋ねると、琢磨はいったて真面目な表情で答えた。 「君が読んでいいって言ってくれてからじゃないと意味がない」 その返答が琢磨らしいと思って、咲来はくすくすと笑う。
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