第3話 僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい

8/13

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
「ねぇ、渡未さん。 今日、何の日か覚えてる?」 「クリスマス」 「そういう意味じゃないの分かってるよね?」 「君が脳死から目覚めたのと、私達が付き合い始めてちょうど5年目」 ーーーーーー10年前のあの日、尋ねられた心臓移植の質問を咲来は受けなかった。 『ごめん、なさい………。 私は、受けられ……ません………』 『…………………』 『彼は、私に生きる〝希望〟を、〝意味〟を、〝理由〟を、与えてくれた人です。 だから、お願いです。ワガママだと、身勝手だと、分かっています。 ………でも、でも、お願いです。 彼が目覚めるまで待たせてください』 『『『………………!』』』 3人が驚いたように目を瞠る。 『…………しかし、君も心臓のドナーを待っているんだろう…?』 『…………私も、彼が目覚めるまで待ちます。 約束したんです。私が元気になったら海を見に行こうって。 だから…………』
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加