第3話 僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい

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『………分かった』 琢磨の父親が了承の返事をしてくれる。 それから1年だ。咲来のドナーが見つかったのは。 しかし、琢磨は目覚めなかった。 咲来は、毎日のようにお見舞いに行き、琢磨の時のように本を買ってきては琢磨に読み聞かせた。 度々、諦めの言葉を琢磨の家族からも医者からも掛けられたが、それでも咲来は待ち続けた。 そして、琢磨が目覚めてから5年の月日が経ち、いつものように本の読み聞かせをしていたある夏の日。 ────琢磨は目覚めた。 「う…、………ぁ…」 長年眠り続けていたせいで声は出せていない。 それでも、咲来は涙を瞳に溜めて笑って言った。 「おかえり、佐波君」ーーーーーー
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