第3話 僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい

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「─────………やだ」 「えっ!?」 驚いて咲来の方を向いた琢磨の唇目掛けてキスをする。 「……あ、外しちゃった」 唇にしようとしたつもりが、外してしまい唇の端にキスをしてしまう。 「……………!」 何をされたのか分かったのか、琢磨は顔を真っ赤にして後ろに下がろうとする。 しかし、マフラーを巻いているため下がることはできなかった。 「『やだ』って言うと思った?」 いたずらっ子のように微笑む。 「…………っ!」 騙されたと分かって項垂れる。 「じゃあ、今度は10年前()の約束を果たさなきゃね」 昔と言われて思い出す。 『元気になったらさ、海にでも行ってみる』 そう約束したことを。 「なら、お正月にでも行ってみようか」 そう言って、琢磨は咲来の手を握った。
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