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「父上、もう行かれるのですか?」
「オヤジ、どこいくの?」
幼い弁天と帶臥を残し、梵天は身支度を済ませて屋敷の門を潜り出た。
「土地神として最後の仕事をしてくる。弁天、帶臥とこれからの倭国を頼んだぞ。修業は欠かさず行いなさい。では、数日で戻る。」
父としてのこの日最初で最後の言葉を残し、倭国の守護神は我が家を後にした。東の倭国を襲った悪夢を繰り返さないため、事の発端となった真蛇羅の一派の一族の消息を漸く突き止めた。この地を守るために梵天は衰えた最後の神力を貯え夜刀神を滅ぼすときを待ち続けていた。夜刀神は連なる険しい山脈地帯の谷底に住処を構えていると聞いた。辿り着くまでは三日はかかる。紫電の本家に結界をかけてから出立した。
そして、梵天が本家を旅立ったその日に二度目の災厄は動き出していた。
谷底で夜刀神の屋敷はかつてない程に賑わっていた。梵天が夜刀神の正確な位置を割り出すために故意に狙われたその日こそ、夜刀神最大の一族の儀式の日だった。 儀式の準備で祭司たちは慌ただしく駆けずり回り、村の者達はそわそわと色めき立つ。
「歳破様、牢から出てください」
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