《壱》残党狩り

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儀式の三日前。 夜刀神で初めて行われる二人同時の結婚の儀。 この日儀式を受ける少年(夜刀神 歳破)は夜刀神では珍しい混血だ。 夜刀神は古来から一族の血を重んじる風習が色濃く、同族同士での婚姻しか許されない。駆け落ちをして里の外へ逃げたものは追放されると同時に暗殺され、女のみが里へ連れ戻される。そして、次の子を産む胎盤として囲われる。 かつて逃げ出した歳破の母がどんな男と契りを結び、愛し合ったのかは里の子である歳破さえ知らなかった。 小さかった歳破が知っているのはただ一つ。母は自分を産んだ直後に逝去し、産まれてきたときには既に父は死んでいて里に保護されたということ。 里の者達には混血だと罵られ、族長の屋敷の地下牢で飼われて過ごしていた。 カシャリと牢の鍵が看守の手によって開いた。地下で一人過ごしてきた歳破が久しぶりに聞いた人の声は、里子が十歳の誕生日に受ける婚礼の儀の男児に抜擢され、純血じゃないのに牢から出て、これから地上で暮らしていけるという朗報だった。しかし看守の噂話に耳を傾けることしか暇を潰す方法がなかった歳破は知っていた。 夜刀神の儀式は普通ではない、と。 同じ血で子を成すなど、親が子を性奴隷にするなど狂っている。 歳破は看守の噂話で知っていた。同じ混血の女児が外界で見つかった。里に一人いる純血の女児は歳破と、混血の女児は能力地の高い族頭と婚礼の儀を執り行うと。 里は一族内でのみ交配を行い続けていたことが災いしたのか、ここ数年女児が産まれてくることがなかった。胎盤となった女の高齢化や、気が狂っての自殺。里の者が手を尽くして女を守ろうとしたが、里に囲われ続けて常識の狂った女達はもう死に絶えて、外界への憧れをもつ若い娘たちは逃亡し、自殺し、発狂した。
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