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派手目で、遊んでいそうで、簡単そうな女。それが第一印象である。
「僕さ、自分の悪いところ全部直すんだ」
僕はテーブルに突っ伏した。
「そっかそっか、キミは偉いね。辛かったね」
テーブルにだらしなく突っ伏す僕の頭をナヲコは優しく撫でた。その酒とタバコで焼けたハスキーな声がカラスの鳴き声を連想させる。何故だかとても心地良くて眠たくなる。
酒に酔った僕の記憶はそこまでしかない。
「朝だよ。起きて」
初めて見る天井。見慣れない部屋で目覚める。初めて聴く少女の声。少女は僕の上に跨がっている……なんて言えばイヤらしく訊こえるかもしれないが、少女の躰(からだ)はとても小さく、文字通りに少女であった。
「ママー。おじさん起きたよー」
少女の声にキッチンにいたエプロン姿の女が顔を見せる。いやいや、僕二十代だし、そこはおにいさんだろ!
「頭痛くないかな?」
浅く歪んだクランチボイスに、それが昨日知り合ったナヲコだと気付く。夜はあんなに派手だったのに、今の顔は随分違うものだ。それは所謂(いわゆる)母親の顔ってやつだった。彼女の声は相も変わらず心地よい。
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