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仕事の定時で逃げ出す僕は、不意に鞄でくしゃくしゃになっているナヲコの電話番号を思い出す。無意識に僕は自分のスマホを取り出していた。
ぷるるるるっと鳴る発信は三回。昨夜出会ったカラスはハスキーな声でそれに応じる。
「ナヲコ? ごめん。今夜も逢えるかな」
この時から僕は、ナヲコと決して少なくない頻度で逢うようになった。
翌日は土曜日で会社は休み。ナヲコのベッドで目を覚ます、もちろん一緒に眠っただけで、何もしていない。ココちゃんが隣の部屋にいるから。
寝坊したな。高くなった昼の太陽が窓から差し込む。隣で目を覚ますナヲコの体温が、その柔らかい熱と巧いことそこで重なり合う。
目が合えば笑い合えた。胸を締め付ける張り裂けそうな不安は、その姿を消す。ナヲコの照れる横顔を見続けながら、こんな時間も悪くないと思えた。
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