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来週取りに行くねって言っていた荷物をアケミが取りに来たのは、別れて一ヶ月も経ってからであった。時間にルーズなのは相変わらずだな。なんて可愛く思えてしまうのは、まだまだ僕が彼女のことを好きだからなのであろう。いつになったら、この呪いは解けるのであろうか。心の何処かで未だアケミは僕の元へ帰ってくると信じていた。
「久しぶり」
なんて言いながらアケミは自販機で買った缶コーヒーを一つ僕に手渡す。違う。久しぶりなんかじゃない。土日祝日以外毎日顔を合わせている。僕はいつもアケミの傍にいるんだ。
そんな言い方をするアケミの中で、僕はいない存在になっているのであろう。そうしないとやってられない気持ちも理解できるつもりだ。
まだ温かい缶コーヒーの蓋を開け、口を付ける。徐々に徐々にその熱は失われていく。
窓の外でカラスは鳴く。
カァーカァーカァー(おねがいわすれないで)。
「ねえ、わたしたち、何がどうして歯車が狂ったのかな?」
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