電信柱にくちづけを

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 いてもたってもいられなくなった僕はどうしてもナヲコに逢いたくなった。止め処ない喪失感は僕を走らせる。  ぬくもりが欲しかった。誰かに許されたかった。  転んで冷たいアスファルトで膝を擦りむいて血が滲んでも走った。この時『電話してから来てね』というナヲコの言葉を忘れていた。それがタブーなのだとも知らずに。  ナヲコの住むマンションは郊外に位置する。すぐ傍に松の木が疎らに生える小さな公園があり、そこに見覚えのある顔を見掛ける。 「あれ? ココちゃん?」  ブランコを一人で漕ぐ幼い少女が一人。既に随分遅い時間だ。 「あ、おじさん」 「あ、おにいさんだから。きっとママより若いから。それより何でこんなに遅くに外にいるんだい?」  僕の質問にココちゃんは少しだけ考え、キョロキョロと辺りを見渡し、小声で話す。 「これ内緒なのだけどね、今お客さんが来ているんだ。それでね、お客さんはママに乱暴するからココが助けようとするの。そうするとママが外で遊んでなさいって言うんだ」
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