私と聡

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ホームに着くと、 「あ!!」 と、思わず口に出してしまった。 先ほどの合コンで、つまらなさそうにしていた茶髪の彼だ。 彼は私に気づき、 「あ・・・」 と、目を丸くして私を見ていた。 知らんぷりされると思いきや、そういう反応は意外だった。 「どーも」 愛想笑いを浮かべて、挨拶する。 彼は無言で、会釈する。 でも、さっきの合コンでの彼のつまらなさぶりを見ていた私としては、何を話していいか分からない。 彼にしても、もう放っておいて欲しいかもしれないし。 「それじゃあ、お疲れ様です」 そそくさとその場から離れようと一歩踏み出した時、 「こっちの方向?」 と彼から聞かれた。 「え?」 まさか話しかけられるとは思わなかった。 「家、こっち方向?」 「う・・・うん」 愛想笑いを浮かべる。 「俺、ここから二つ先の駅」 と言われた。 「そうなんだ」 「今から、家、来ない?」 「へ?」 どういうこと? 「嫌ならいいんだけど」 「え?あ、そう」 今のは誘われたのだろうか。 こんな人に興味がないような感じなのに? 気を遣うのもバカバカしくなって、その場で電車が来るのを待っていた。 そして、数十秒後に滑り込んできた電車に二人で乗り込む。
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