番外編 ある日の偶然

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先月も迷子になったばかりだった。 家の近くで飼われている柴犬のマメが首輪をしたまま近所をウロウロしていて、マメの飼い主に知らせなきゃと思ったのだけど、マメはお構いなしに走っていくから、心配になって後を付けたら、マメと一緒に帰れなくなった。 僕たちは隣町まで来ていたみたいで、交番に保護された僕たちをお母さんが迎えに来た。 お母さんは何も言わなかったけど、お父さんからはめちゃくちゃ怒られた。 だって、僕が追いかけないとマメが迷子になっちゃうのに。 早く両親が自分を見つけてほしい気持ちと、父親には会いたくない気持ちがせめぎあう。 短くため息をついた。 「ちょっとー、海里のせいで迷子になっちゃったじゃない!!」 「うるせー!亜海だって○○を見たいって言っただろ?」 「いきなり海里が走り出すからでしょ?お兄ちゃんどこかなぁ」 「亜海、俺から離れるんじゃねーぞ。お前まで迷子になったら大変だからな」 「海里に言われたくないわよ!」 「こうなったら俺たちで兄ちゃんを探すぞ!!」 「あそこのベンチで地図みようよ」 「よし、作戦会議だ!」 同じ年くらいの男の子と女の子が僕が座っているベンチに、口喧嘩をしながらやって来た。 女の子が僕の隣に座って、カラフルな地図を広げて眺めている。 「ここはどこなんだろう?海里、分かる?」 女の子が話しかけた男の子は、首から下げた水筒のストローをくわえて、中身を飲んでいた。 「もう!!海里ってば呑気にお茶なんか飲んで!!頼りにならないんだから!!」 「なんだよー。怒るなよ」 「ちょっとこの地図は私には難しいみたい。お兄ちゃんならササッと読んでくれるのになぁ」 「兄ちゃーーーーん!!」 男の子が思いっきり叫ぶ。
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