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両親とはぐれて心細い気持ちはどこかに飛んで行ってしまった。
僕一人だと、どうしていいかわからなくて、あのままベンチに座ったままだったと思うから。
「どこから来たの?」
海里が言った。
「僕は××町に住んでる」
と僕は答えた。
「××町ってどこ?遠い?」
亜海が聞いた。
「電車に乗ってきたよ。君たちは?」
「俺達は車で来たよ。うちのお父さん、運転が上手いんだ」
と海里が答える。
互いに住んでいるところを話すけど、亜海と海里がどこに住んでいるのかは全く分からなかった。亜海と海里は僕に分かるように一生懸命説明してくれる。とにかく、自分が知らない街に住んでいるとだけ分かったけど・・・
話題を変えるために、
「君たちは兄弟なの?」
僕は聞いた。
「うん!!私達双子なの!」
「双子?」
「一緒に生まれたんだ」
「へぇー」
「でも、俺が兄ちゃんなんだぜ!亜海は妹」
海里が得意そうに言った。
「一緒に生まれたのにどうして兄と妹に分かれるの?」
素朴な疑問をぶつけてみる。
「海里のほうが先に生まれたの。だけど、お兄ちゃんって感じ、全然しなーい」
亜海は無邪気に言い放った。
「亜海!!これからは、ちゃんとお兄ちゃんって呼べよ!」
「やーだよー!!」
亜海はケラケラと笑って、海里は面白くなさそうにしている。
そのとき、
「亜海!!海里!!」
と声がして、僕のお兄ちゃんと同じくらいの年の男の子が、こちらへ駆けつけてきた。
「あ!!お兄ちゃーん!!」
亜海は繋いでいた手をパッと離し、その少年へ一目散に向かっていった。
「亜海!!探したんだよ!!」
少年は走ってきた亜海を受け止める。
亜海と手をつないでいた右手がスースーしていた。
少し、寂しい。
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