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「お兄ちゃん、亜海、降りる!」
「え?もういいの?」
「うん!!」
亜海は、お兄ちゃんの背中から器用に降りた。
「兄ちゃん!俺もおんぶ!!」
海里がお兄ちゃんの背中によじ登る。
地面に着地した亜海は、こちらに向かってきて、僕の手を取った。
「聡くんは亜海がおんぶしてあげる!!」
「へ!?」
亜海は僕の腕を掴んで、後ろを向いて、その小さな背中に僕を負ぶおうとした。
「亜海ちゃん、僕はいいよ」
「遠慮しないで!!亜海ね、海里のこともおんぶ出来るんだよ!!」
亜海の背中に負ぶわれて、僕のつま先は1センチだけ地面から離れている。
「亜海、危ないよ!!」
お兄ちゃんが言う。
「やっぱり、重たーい!!」
亜海はそう言って、僕を地面に降ろし、ふぅっと大げさに息をついて、
「聡くんの方が大きいから、無理だった」
白くてさわり心地のよさそうな頬を上気させて言った。
その瞬間、ドクンと心臓が跳ねる。
「聡くん、お父さんとお母さんが見つかるまで、亜海と手を繋ごう!!」
亜海は、僕にプニプニした手を差し出して言った。
僕は、少しだけドキドキしながら、その小さな手をぎゅっと握る。
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