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「あれ?聡、寝ちゃった?」
亜海の声が聞こえた。
夢と現実の区別がつかなくて、勢いよく起き上がってしまった。
「うわ!どうしたの、聡」
目の前には驚いた亜海の顔。
「・・・・夢見てた」
「ふぅん。どんな夢?」
「・・・・なんだっけ?」
「なんじゃそりゃ」
お茶でも飲む?と亜海が立ち上がって、キッチンからペットボトルに入ったお茶を持ってきた。
随分リアルな夢を見ていたはずなのに、何一つ覚えていないのは結構あるあるではないだろうか。
ガラスのコップに薄緑色の液体がなみなみと注がれていく。
「俺さ、前に男女の双子、初めて会うって言ったじゃん?」
「ん?あぁ、そんなこと言ってたね。急にどうしたの?」
「あれ、嘘だった」
「ふぇ?」
「小さいころに会ったことあるの、思い出した」
「へぇー」
亜海が注いでくれた冷たいお茶が喉元を通りすぎていく。
「さっきの20周年のあそこ、昔、両親に連れられて来たことがあるんだよ。小学校に入ったばっかりの頃だったかな?」
「うん」
「で、両親とはぐれたんだよな。そしたら、男の子と女の子の双子に助けられた」
「そうなの?」
「名前も顔も覚えてないんだけど、女の子がかわいかった。たぶん、あれ、初恋かもしれない」
「・・・・・」
亜海が黙ったままだから、不思議に思って、彼女の方をみると、頬を膨らませて俺を睨みつけていた。
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