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聡との出会いは、社会人になってから参加した合コンだった。
両親が亡くなってからは、羽目を外さないように、まじめに生活をしていたため、精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいになっていた頃だった。
二人がいなくなってからの喪失感と、新しい生活となれない仕事で、大学を卒業してまだ3ヶ月目だというのに、10歳くらい老け込んでしまったような感覚があった。
家と会社の往復。
新人に対する厳しい指導と期待。お兄ちゃんや海里がいなかったら、とっくに潰れていただろう。あの事故の日以来、3人で励まし合ってきたから。
4対4の合コンは、セオリー通りに始まった。
同級生や、同級生の同僚は、服装の規定が私が働いているところよりか緩いようで、シックなワンピースの上にノーカラーのジャケットや、淡い色のおしゃれなスーツにシフォン素材のブラウスなど、華やかな装いだった。
男性側の幹事が、一杯目の注文をまとめてくれた後に、同級生が私の恰好を見て、
「亜海、合コン仕様じゃないじゃん!」
と茶化した。
「うちの会社、特に華やかさが求められてないからね。仕方ないよ」
私はというと、黒一色のスーツに白のブラウスだった。
「でも、なんか、亜海の恰好、エロい」
友人がニヤッと笑った。
「えぇ?どこがよ」
「黒ぶち眼鏡とか掛けてたらますますいやらしいわ」
「何よそれ」
友人と二人で笑いあった。2ヶ月ぶりに学生時代に戻った気分で、張り詰めていた気分が少しずつ和らいでいく。
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