レター

交換

契約書を書き終わってから、歩は姿勢を改めた。

「遅くなりましたが、これからよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ！」

なんだかものすごく気恥ずかしかった。

「さっき……とても困ったんです」
「えっ？」

やっぱりいきなり抱き締められたら困るよなぁ……

僕がもう一度謝ろうしたら。

「一さんへのご連絡手段がなくて……戻って来ていただきたいって思って、わたし……」

歩の思いがけない言葉に、鼓動が高鳴る。
もう失敗してはいけない。衝動で動いても、お互いに良いことはないと今回で分かった。それでも僕は動いてしまいそうだが……我慢だ、ガマン。
それに、これで僕の電話番号は、合法的に歩へ……

「買って、しまいました、スマホ」

携帯会社の回し者みたいに、彼女は言った。