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しばらく咳き込んでいたが、晴真は僕の様子をニヤニヤしながら、もちろん食べる手を休めることなく見ていた。
「す、好きなひとっていうか、バイト先の店長だよ」
「 答えになってませぇん」
僕は相変わらずタイミングが悪いようで、晴真が食べ物を飲み込む少し前に答えてしまう。
晴真の追及は終わらない。
「バイト先じゃ、ふたりっきりなんだろ?」
「ま、まあ、他にバイトいないし、客もあんま来ないし」
「じゃ、し放題ってわけか」
「ッ……!」
僕は本当にタイミングが悪い。いや、きっと晴真が意地悪く僕の飲むタイミングでこういうことを言い出すのだ。
僕はまたしばらく噎せていた。
「ッ……な、何言って……」
やっと出た言葉は尻つぼみで、動揺していることをさらにアピールしただけだった。
「あぁ、お腹いっぱぁい」とワザとらしく声を上げ、満足気にこちらを見る晴真の表情が憎たらしい。
さすがに晴真もこれはマズイと思ったのか、肩を竦めた。
「バイト先以外で会ってないの?」
「……会ってないよ」
警戒心丸出しの声で答えたが、晴真にはあまり効き目はない。友人は「ふぅん」と言って、テーブルの上に置いた僕のスマホを見た。
「もち、ライン交換してんだろ?」
「してないよ」
「……は?」
「だって、店長、スマホ持ってないし」
晴真はそれっきり彼女のことを聞かなかった。
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