3人が本棚に入れています
本棚に追加
危うくコップの中の水で窒息死するところだった。
激しく咳き込む僕に、晴真は「慌てて飲むからさぁ」と、テーブルの上にあるペーパータオルを何枚かこっちに寄越した。「誰のせいだ!」と叫びたかったが、それも咳に掻き消された。
「ほら、落ち着け」
納得は行かなかったが、僕は途切れ途切れの礼を言い、込み上げる咳が治るのを待った。
晴真も待ってくれていた。
「さ、オレ、当たる理由は?」
僕は、歩にしてしまった失態を晴真に話した。この友人の前では、いつの間にか素直になっている自分がいる。
必要な相槌以外は打たずにすべてを聞き終わった晴真は、言う。
「はい、そのまま『ななし書堂』に直行」
「…………は?」
そして、いつも突拍子もないのだ、この友人は。
「後悔先に立たず、後悔しても仕方ない、っていうことわざがあんだろ?」
「あるけどないよ!」
僕は、ファミレスで叫んだ。
最初のコメントを投稿しよう!