1051人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにね、これ」
ハヤト君は、照れくさそうに左手の薬指に嵌められた、金色の指輪を見せてくれた。
「ウワ~、ハヤト君。もう結婚してたんだ」
「スゲエだろ?半年前に籍入れたばっか。
10歳も歳上の、子持ちのヒト」
「ええっ!……あ、ゴメン」
「いいよ、慣れてるから。
俺、会社が倒産したあと、何やっても上手くいかなくて…こっち帰ってきた後もずっと不貞腐れてた俺を助けてくれた女(ヒト)で…さ。
オマエにはああ言ったけど。俺にはやっぱ…要領よく遊ぶなんて無理みたい」
「ハヤトくん…」
変わらない彼の照れ笑いに、涙腺がつい緩くなる。
「俺、オマエとは縁がなかったけど。
結婚ってさ、色んなカタチがあるんじゃないかな?なーんて」
聞いているうちに、目の前がゆらゆら揺れて視界が定かでなくなった。
「だからな、元気だせよ。
大体オマエのいい所は、何にも考えてない所だったろ!」
「うん…グスッ。
ありがとう。そうだね、そうだったよね…
ハヤトくん!」
「トーコ!」
ひしと抱き合う。
「アハハ、なんだその癖、まだ直ってないのかよ………あ、やべ」
「?」
チョイチョイと私をつつきながら、しきり後ろを指差す彼に、感動もそこそこに後ろを振り返った。
と_____
「……何を…している」
そこには、抱き合う私達を冷やかに見下ろして、氷の彫像のように佇むオオカミさんの姿があった。
「ひっ…」
最初のコメントを投稿しよう!