3 過去からの来訪者

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「それにね、これ」  ハヤト君は、照れくさそうに左手の薬指に嵌められた、金色の指輪を見せてくれた。 「ウワ~、ハヤト君。もう結婚してたんだ」 「スゲエだろ?半年前に籍入れたばっか。 10歳も歳上の、子持ちのヒト」 「ええっ!……あ、ゴメン」 「いいよ、慣れてるから。  俺、会社が倒産したあと、何やっても上手くいかなくて…こっち帰ってきた後もずっと不貞腐れてた俺を助けてくれた女(ヒト)で…さ。  オマエにはああ言ったけど。俺にはやっぱ…要領よく遊ぶなんて無理みたい」 「ハヤトくん…」  変わらない彼の照れ笑いに、涙腺がつい緩くなる。 「俺、オマエとは縁がなかったけど。  結婚ってさ、色んなカタチがあるんじゃないかな?なーんて」  聞いているうちに、目の前がゆらゆら揺れて視界が定かでなくなった。 「だからな、元気だせよ。  大体オマエのいい所は、何にも考えてない所だったろ!」 「うん…グスッ。   ありがとう。そうだね、そうだったよね…  ハヤトくん!」 「トーコ!」  ひしと抱き合う。 「アハハ、なんだその癖、まだ直ってないのかよ………あ、やべ」 「?」  チョイチョイと私をつつきながら、しきり後ろを指差す彼に、感動もそこそこに後ろを振り返った。  と_____   「……何を…している」  そこには、抱き合う私達を冷やかに見下ろして、氷の彫像のように佇むオオカミさんの姿があった。 「ひっ…」
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