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「行って……らっしゃーい」
扉の閉まる音とともに、手の振り幅が次第に小さくなっていく。
彼が行ってしまった後のしんと静まり返った家が、今の私にはとても寂しい。
考えてみればこれまでの私には、一人になった時間など殆んどなかった。
この時間にはもう課の皆と一緒にいて、和気藹々と喋ったり、オオカミさんに怒られたり…
そうだ、オオカミさんと一緒にいた時間って、随分と長かったのだ。
下手をすれば、今よりずっと____
「………ぐすっ」
い、いけないっ。
私は慌てて、目頭に滲んだ涙を拭いた。
もうすぐ結婚式だっていうのに、一体何を考えてるの?
ブルブルと強く首を振り、ふと頭に浮かんだ最悪の考えを否定する。
あかん…
もしかしてこれ『マリッジブルー』ってやつかしらん?
私ってば、意外に繊細。
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