3 過去からの来訪者

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「行って……らっしゃーい」  扉の閉まる音とともに、手の振り幅が次第に小さくなっていく。  彼が行ってしまった後のしんと静まり返った家が、今の私にはとても寂しい。  考えてみればこれまでの私には、一人になった時間など殆んどなかった。  この時間にはもう課の皆と一緒にいて、和気藹々と喋ったり、オオカミさんに怒られたり…  そうだ、オオカミさんと一緒にいた時間って、随分と長かったのだ。  下手をすれば、今よりずっと____ 「………ぐすっ」  い、いけないっ。  私は慌てて、目頭に滲んだ涙を拭いた。  もうすぐ結婚式だっていうのに、一体何を考えてるの?  ブルブルと強く首を振り、ふと頭に浮かんだ最悪の考えを否定する。    あかん…  もしかしてこれ『マリッジブルー』ってやつかしらん?  私ってば、意外に繊細。
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