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プロローグ
「結城駿太(ゆうきしゅんた)だな。話がある」
夏休み明けの授業は何てだるいんだろう。早く帰って遊びたい。
そんな話を友人としていた時だった。
「ええと、どちらさん?」
完全初対面の男子は、片目が隠れそうなほどに伸びた前髪を苛立たしげに払った。
「いいから来い。大事な用なんだ」
こちらを睨む、鋭い瞳が怖い。頷かないと酷い目に遭わされそうな気がする。
「わ、わかった。言う通りにするよ」
彼は黙ってついてこいとばかりに、どんどんと足を進めていく。話があるんじゃなかったのかという突っ込みは、おとなしく飲み込んでおくことにした。
行き先は、普段は立ち入り禁止とされている屋上だった。管理者が怠惰なのか、鍵が開いてたり開いていなかったりする。
「サチ、連れてきたぞ」
扉が開いた先にいた先客に向かって彼が呼びかけると、ゆっくりとこちらを振り向いた。
腰までまっすぐに伸びた黒髪がふわりと舞って、オレンジの光を受けて輝く。白い肌に飾られたブラウンの瞳と視線が絡み合い、大げさなほどに開かれる。
そのまま言葉なく見つめ続けられ、どうにも居心地が悪くなってきた。おそるおそる呼びかける。
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