第三話

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「久しぶりだね。一週間は経ってるかな?」 「それくらいになるか、な? 予想はしてたけど、準備が忙しくてさ」 「喫茶店やるって怜に聞いたよ。結城くんがメインで企画したんでしょ? さっすがだよね」  御守とは、定期的に会っているのか。また、もやもやが生まれる。 「サチのクラスは何をやるんだ?」  おもちゃを前にした子供のように、袋から輪飾りを取り出して眺めていたサチは一瞬、身体を硬直させた。 「……サチ?」 「あっ、ご、ごめん、ちょっとね、思い出してたの。えっと、展覧会だったかな? 一人ずつ作品を作って飾るみたい」 「みたいって、サチも参加するんだろ?」 「私は、準備係だけ。毎日登校できてないからね」  この時間まで残っていたのはそういうことか。仕方ないとはいえ、ちゃんと参加できないのは寂しいだろう。 「そっか。なら、なおさらオレがサチのために頑張らないとな」  なぜか、サチに真横を向かれた。唇が微妙にとんがっていて、まるで拗ねているみたいだ。 「……そうやって、急にさわやかに笑うの、反則」 「さ、さわやかって」  背中が変にむずむずする。何だろう、この気まずいわけでもなく、でも落ち着かない空気は。 「おい、お前! もう六時だぞ、いい加減に帰りなさい!」     
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